December 21, 2012

■橋野桂氏「”一瞬のひらめき”を切り取りつつ計算し尽くされた作品に惹かれます。

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橋野氏が手がける作品

ペルソナ4 ザ・ゴールデン


『マルホランド・ドライブ』のビジュアル表現が『ペルソナ』シリーズにも影響

人が頭に浮かべるイメージを、まさにそのまま切り取ったような映像美や、独創的な物語、また、それらを巧みにつなぎ合わせるアイデアのうまさなど、デヴィッド・リンチ監督作品には多くの感銘を受けました。
謎めいた映像を散りばめて解釈を観客に託す演出力にも、毎度舌を巻きます。
ですから、僕にとって「マルホランド・ドライブ」は単なる映画という娯楽の範疇を超えた興味深い創作物なんです。
彼のヒット作となったドラマ「ツイン・ピークス」などに見られる、どこか人間の心象風景を思わせるビジュアル表現も魅力的で、一部はペルソナシリーズなどの作品に活かしたものもあります。
じつは、『マルホランド・ドライブ』は開発初期にべルソナチーム全員に観てもらったのですが、「ワケがわからない」という感想が多くて拍子抜けしました(笑)。
でも、リンチ監督の作品は、いずれも一瞬のひらめきを映像にしたかのようで、そのじつ計算し尽くされた演出や構成に貫かれていて、目が離せません。
物語がすばらしかったり、演出が巧みであったりして、”名作”と呼ばれる映画はそれこそ星の数ほどあります。
ですが、この点が、リンチ監督作品がほかの名作と一線を画していると感じる最大のポイントなんです。

マルホランド・ドライブ [Blu-ray]
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『銀河鉄道の夜』の”ひらめき”と”計算”の極致に作品作りを学ぷ

あまりに著名な作品で、いまさら僕が語るぺきこともないのですが(笑)、『銀河鉄道の夜』は、銀河の中を鉄道が走るという、ビジュアル的な印象が強い童話です。
しかしこの作品は、賢治が最愛の妹を亡くした際に、彼が住んでいた東北の満天の夜空を見上げ、妹を思いながら書い
たと言われている物語で、とても深い感情が根底に流れています。
じつは二通りの結末が書かれ、出版の時期によってそれが違っているなど、発表の経緯にまで作者の葛藤がありありと表れている点が印象深いですね。
心底苦悩し、考え尽くした賢治の心境がなければ、生まれなかった作品だと感じます。
「マルホランド・ドライブ」のところでも言いましたが、一見ただのひらめきを切り取ったようなキレイさにゃテンポのよさを感じさせながら、実は骨太に考え尽くされている、そういった作品に惹かれます。
ちなみに、この作品も、僕が読んだだけでなく、会社の勉強会で題材にして、チームスタッフどうしで読み解きのようなことを行いました。

銀河鉄道の夜 (角川文庫)
銀河鉄道の夜 (角川文庫)



橋野氏の作品の方向性を決定づけた『真・女神転生』

この作品をプレイしてまず感じたことは、”モノの見かたは人によってまったく違っていて、絶対的なものはないんだ”ということですね。
誰かが「いい」と言っていることが、本当にいいのかどうかは、最終的には自分で判断しなければならない。
言葉にすると当たり前のことのように聞こえてしまいますが、双方向であるゲームという媒体で問うにふさわしいメッセージだなと思いました。
この考えかたは、程度の大小の差こそあれ、僕の作品ではつねに込めてきたつもりです。
たとえば、いま自分の状況を「つまらないな」と思っていても、視点やものの捉えかたが変わることで、ガラリと気分が変わるかもしれない。
自分が変われば世界も変わるのだということを、これからの作品でより強く伝えられないかと考えていたりします。
そういう意味では、僕が手がけたあらゆる作品と、根本でつながっている作品だとも言えますね」

真・女神転生
真・女神転生

真・女神転生
真・女神転生



※週刊ファミ通 2012年6月14日号より


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