August 21, 2012

■犬塚太一氏 「冒険の原点は ”ウイザードリィ”から学びました」

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犬塚氏が手がける作品

ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D


知的なおもしろさを知った『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

これは高校生くらいのときに、友だちに誘われて映画館で観ました。
当時は、単に「おもしろい映画だったな」と思っていましたが、振り返ると、”知的なおもしろさ”を初めて感じた体験だったんじやないかな。
主人公は過去に戻って、両親の青春時代に関わっていくのですが、”過去でここを変えたから、現代ではこうなった”という、理屈で出来たおもしろさを受け取ったように思います。
すごくよくできた推理小説を読み終えたときに、結末を知って「ああ、なるほど」と唸ってしまうような感覚でした。
新聞に書いてあるひと言にも意味があったりだとか、たくさんの複線が張られているところも興味深い。
だから、何度観てもおもしろいんですよね。
現在では、ストーリーを作るうえで、”たくさんの布石がキレイにつながってハッピーエンドになる”という意図をスタッフに説明するときに、例の一つとしてよく挙げます。
知らない人は少ないので、伝わりやすいんです。
読者の方で、まだ観ていない人は、いまからこの作品を楽しめるのですから、そんな幸せな話はないですよ(笑)。
シリーズ作ももちろん好きですが、いちばん印象的なのは、やはりこの第1作です。
バック・トゥ・ザ・フューチャー 25thアニバーサリー Blu-ray BOX [Blu-ray]
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『『坊っちゃん』の時代』のエンターテインメント性にワクワク

20年ほど前だと思いますが、当時何度も読み返したマンガです。
明治時代、「坊っちゃん」の構想を練っていたころの夏目漱石のエピソードが描かれているのですが、これも”バック・トウ・
ザ・フューチャー」と似た知的なおもしろさがあります。
街を歩いていると、森鴎外と会ったり、東京駅で東条英機とぶつかったりと、ふとしたときに有名人が登場する場面がたくさん散りばめられていて、その構成力に、「おおっ」と鳥肌が立つような感覚を覚えました。
明治時代の雰囲気が見事に描かれていて、その当時の人が、どんなことを考えて暮らしていたのかという点にもワクワクしながら読みましたね。
また、夏目漱石というと、病弱で人付き合いが苦手というイメージがありますが、この作品ではすごく人間味溢れる人物に措かれているところが印象深い。
どこまでが史実か、ということは気にせず、エンターテインメントとして受け取っています。
とにかく、文学というジャンルで、こんなに楽しいマンガが作れるということが新鮮でした。
私は、世代を越える作品にアツくなるんですよ。
何しろ、入社して初めて携わった仕事が、「ドラゴンクエスト后‥袈の花嫁」という、親子3代の壮大な物語を描いた作品でしたから(笑)。
『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)
『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)



冒険のきぴしさと楽しみかたを受け取った『ウィザードリィ』

『ウィザードリィ』は、少年時代にファミコン版を遊びました。
ワイヤーフレームで描かれた3Dダンジョンを、自分の視点で進んでいくゲームです。
すごいのは、ダンジョンの壁がただひたすらあって、戦闘に入るとモンスターが登場する。以上!
という簡素な構造。これが、”ゲームの行間を想像しながら遊ぶ感覚”を受け取った最初の作品、という気がします。
また、特徴として、すごくバランスがきついんですよ(苦笑)。
私は、こういった作品からゲームというものに触れたので、「冒険なんだからきびしいのは当たり前だ」という考えが根底にありますね。
レベルを上げてキャラクターを強化したり、レアアイテムを集めたりという喜びや感覚も、この作品で教わりました。
攻略するために、方眼紙にマップも描きましたよ。
ただ、いまのゲームでそれをやると、ユーザーさんは遊んでくれません。
ですから、”冒険という山に登るときに、どれだけ登山グッズを用意してあげるか”を意識します。
現在では、最新のグッズで少し安全に遊びつつ、冒険の普遍的なきびしさや楽しさを味わってもらうような調整をしています。
私は、登山をやったことはないんですけどね(笑)。
ウィザードリィ
ウィザードリィ



※週刊ファミ通 2012年6月14日号より


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